ドイツで盗難  
 

2006-8/5 (Sat)

 
 

8月3日ドイツのケルンで盗難にあった。

朝10時からのベルギーはブリュッセルでの会議に出席するため、泊まっていたドイツのデュッセルドルフを朝6時に出て、デュッセルドルフ駅から列車でブリュッセルに向かったのである。

途中乗り換えのためケルン駅で降りて、ブリュッセル行きの列車に乗り換えるべく、ホームを移り列車を待っていたが、今思うとその時既に大きな旅行カバンを引きショルダーバックを持つ、この大人しく人の良さそうな日本人は格好の獲物として狙われていたのに違いないのであろう。

ほどなく7:14分発列車番号9416、ドイツの誇る超特急ICEがホームに滑り込んできた。ドアが開き21号車に乗り込むと、大きなカバンを転がしながら座席番号64を探したのである。そしてその番号を見つけると、まず肩に掛けていたショルダーバックをその席に置いた、とその時誰かが私に話し掛けてきた。

話掛けられた方向に顔を向けると、通路に立っていたのは紅顔のまだ10代と思しき白人のか弱い感じの青年であった。その少年は自分の持っている列車の乗車券を私の前に示してドイツ語で何かを聞いてきた。無論、私はドイツ語はわからないが、チケットと列車の座席の番号を指で示す仕草から、容易に座席番号を確認しているのが類推できた。

そこで、生来お人良しの私は、その青年がちょうどうちの息子と同じような年代であった事も有り、半ば情にほだされてそのチケットを見たりしながら、丁寧にしばしやりとりを行ったのである。その結果、彼は納得したかのように礼を言いながら私の元から離れて行った。

うむ、また良い事をしたと満足感にひたり浸りながら、座席に座ろうとしたら、たった今席に置いたはずのショルダーバックが無い。あれ?座席の下に落ちたのかな?とか思い、席の下も覗き込んだが何処にも見当たらない。ん?これはどうした事か?と思った瞬間、あ、やられた!と気がついた。要は先ほどの青年と話をしている間に、誰かが席から持っていったに違いない。と言う事は今の青年もグル?!

即、その青年が行った方向に走って行ったが、21号車と22号車の連結の扉のところに、車内販売のための飲料を冷蔵庫にしまっている係員が、冷蔵庫の扉を開けたままにしているので、向こう側に行けない。それでも強引に向こう側に行こうとすると、その係員からここは通れないと制されてしまった。お?てー事はこいつもグルか?と思ったが何しろ追わねば行けない切迫した状態。仕方なく反対側のドアから外に出ようと向かったが、まだ一個大きな荷物を席に残している事、既に発車の時間が迫っている事、対応していると会議に遅れてしまう事、そして何はともあれドイツ語を喋れない事から、ここはこれ以上どうしようも無いと判断し、あー、やられたと仕方無くそのまま座席に着いたのである。

私の状況から異常を察した周りの乗客が、語りかけて来たので英語で状況を話したが、「I’m sorry」と言うのみで、同情の視線は向けられるものの、特に何かのアクションを起こすわけでもなく、淡々と列車はブリュッセルに向かって進んで行くのであった。途中検札の係員が来たので、経緯を説明すると「それはブリュッセルでポリスに報告しなさい」と言う。ドイツで盗られたのにベルギーで報告もなかろうと思い、本来ブリュッセルの空港からフランクフルト経由でそのまま成田へ向かうはずだった予定を変更し、再びこのケルンへ戻って来る事にしたのである。だって、現地のポリスレポート作成してもらわないと盗難保険がおりないじゃん。

ショルダーバックの中には、帰りの航空券、国際免許、社員証、メガネ、会議用の書類、免税のための申告資料等々が入っていたが、何と言っても一番痛かったのはラップトップPCである。そう今までの仕事のデータはもちろん、メールと様々な創作物もどっか行ってしまったのだよ。トホホ。でも、幸い現金、カード、パスポートは大丈夫であった。でもそのPCも昨今の個人情報保護法の施行でセキュリティが厳しくなっており、BIOSのパスワードだけでは無く、暗号化も図られており、立ち上げようとしも立ち上がらないのだよ。そう言った点では、泥棒さんも朝早くご苦労様であったが、ほとんど徒労に終わったと思われる。

それで会議を終えて再びケルンに戻って来てポリスに行ったら、まず最初に事件からもう6時間も経っているが、何故すぐに連絡しないのか?と英語で言われ疑いの眼を向けられた。そこで列車が出てしまうとか、会議に遅れるとかの理由を説明したら、まず何はともあれ110番(ドイツは何番だか知らないが)と言われた。確かに言われてみたらそうだが、この時のポリスは英語でOKだったが、実際はドイツ語で言葉は通じないだろうと思うわけだからそのアクションはなかなか取らないわなあ。

小1時間掛けてケルン駅のポリスでポリスレポートの作成を終え、やれやれとばかりそのポリスを後にした。再発行してもらったフランクフルトから成田の便にはまだ時間がある。そこで、この嫌な思い出を断とうと、ちょっとケルン駅の外に出てみたのである。

そしたら、何といきなり目の前に息を飲む様な荘厳な出で立ちの教会が!こ、こ、これは噂に聞くケルン大聖堂ではないか!(Mixiでは写真見れるよ。見たい人はgeda_yamaguchi@star.odn.co.jpまでメール下さい。もし既にMixi会員の方は「ゲダ山口」で検索してちょ)

実は教会フェチでもある私、これには思わずのけぞり、脱兎の如くそのケルン大聖堂へ向かったのは言うまでも無い。ちょうどユーロもほぼ使い果たし、入場料を取られたらどうしようかと思ったが、何と無料。この粋な計らいに思わずキリストとマリアの前にこの禿頭を垂れたのである。無論教会の中も物も言えないほど素晴らしかった!う〜む、どうもこの盗難事件は私をここに導くための神の御心であったかと思う次第。思わず神の前でこの泥棒を許し給えと祈ったのである。

世の中、やはり捨てる神有れば拾う神有りだねぇ。