交通違反  
 

2005-3/6 (Sun)

 
 

久々に交通違反で捕まった。

それが酷いんだよー、Uターン禁止区域での違反だが、その表示が無いのにだ。

事の顛末はこうだ。実は娘が休日に学校に通ってる。今日は遅刻しそうとの事なので、帰京しているこの親父が一肌脱いで車で送ってやろうと言う事になった。で、何とか時間に間に合うタイミングに学校の近くに着いたが、そんなに余裕は無い。通常なら駅のところで右折してちょっと大回りをして行くのだが、今日は時間ロスを避けるため、しっかりとUターン禁止の表示が無い事を確認してUターンした。と言うのも、私は既に日本では10年近く無事故無違反。でもゴールド免許になっていないのは、海外赴任していたので一回免許が失効しているため。でもこの10月まで無事故無違反ならようやく晴れて、ゴールド免許となる。従い昨今、違反には敏感になっている。

そしてそこでUターンしたら、ちょうどその場所には交番が有り、若い警官がピピピピピーと警笛を鳴らし交番から出て来て私の車を止めた。

「ここはUターン禁止です。免許書と車検書持って来て下さい」
「え!?だって表示が無いですよ」
「ずっと前の方にあるのです」
「えー?この場所に無ければわからないじゃん?」

当然、事情徴収に時間が掛かると思い娘に

「じゃ、ここで降りなさい、走れば間に合うだろう」と言うとその警官が
「あ、そういうことなら後で良いのでまたここに戻って来て下さい」とのたまう。

おお、融通が利くじゃん。このまま私が戻って来なくてもいいのかい?とか思ったが、無論、私は逃げたりはしませんし、むしろ今回の件は表示が無いと言う行政の怠慢を指摘した方が良いと思い、堂々と戻る気であったのは言うまでも無い。

そして娘を送り届け、もう一度通って来た道を来たが、やはりどこにもUターン禁止の表示は無い。その事にますます違反は無いと言う確信を持って交番に戻ってきたのである。

ところが、如何にも職務に忠実そうな若い警官曰く、表示はそこには無いがその右折場所のはるか数百メータ手前に、この道路はUターン禁止との表示があるとの一点張り。こっちはそんな手前にあっても覚えてるわけないし、むしろこの右折場所にもう一度しっかり表示しないとわからないじゃないかの押し問答。するとその警官、確かに途中の道路からこの幹線道路に出てくる車はわからないと少し弱気な返事。でもあなたは直進して来たから駄目と冷たい。でも警官もここに表示が無い事には気付いているらしく、ここに表示を出しておく事は然るべきところに進言しておくとのたまう。そう言うなら今回の件、わかれよーと思うが、違反は違反の一点張り。

そこで、実は本来なら私はゴールド免許所有者なのに、海外にいたため、まだその資格が取れていない。今年の10月になればその資格がやっと取れると言う大事な時期にそんな違反を意図的に犯す分けないと力説するが、それでも全く効果は無い。

抗弁中、毛糸の帽子を取って高僧の趣を醸し出す事で、その神々しさに恐れ入りましたとなるかと思いきや特に動揺もせず、淡々と自分の職務を全うする態度。どうにも取り付く島が無い。さてはキリスト教か?であれば十字架でないと駄目か。

ああだこうだ言ってる最中に、その交番に赤ん坊を抱いた黒人夫婦がやって来て片言の日本語で「XXビョーイン、XXビョーイン」と連呼する。どうも赤ん坊が病気の模様。するとその若い警官、日本語で3つ目の信号を左折と言う。でもその黒人わかったようなわからないような。そこで、この私一応、昔取った杵柄の英語で丁寧に説明して上げた。

するとそれを見ていた若い警官「本当に海外に行ってらっしゃったようですね?」と聞く
んだよー、ウソなんて言わんよ。どうも私の言う事を疑ってる模様。そこでどうしてもこの件、私は納得が行かないので、もし違反書を出されても署名はしません、と言うと、むこうもカチンと来たらしく、では裁判扱いになるので供述書を取ります、と来た。

あー、いいとも。どー考えてもこのまま署名をする気は全く起こらないので、どうぞどうぞ、しっかり書いてもらった方が良いと思い、そこで免許書を出すと「地元の方では無かったのですね?」との反応。どうやら、私の事を地元の人間でUターン禁止をわかっててやったと思っていたらしい。「みんな知らなかったって言うのですよ」とも言う。あ、やっぱ私の事を疑ってる。

ところがそこで面白い事が起こったのである。その若い警官ごそごそと書類を捜していたが「あれー、供述書が無い」と来た。ほほー、こりゃ面白い。じゃどうするのだろう。それで今度は情実に訴え出る作戦に出た。

「いやー、単身赴任で娘になかなか会えなくてねー。でも今日は遅刻しそうと言うのでここは久々に親父の出番と思ったわけだ。で、何とか時間に間に合わせようと思って、Uターンをしたんだが、まさかUターン禁止とはねー。でも君、わかるだろー?少しでも何とかしたいと思う親心。美しいよなー。君も子供を待てばわかるよ。それを交通違反だから云々と言うのもちょっと親子の情愛に水を指す行為では無い?重大な違反と言うのなら話は別だが。きっと娘は私のせいでパパが捕まったと気に病んでるだろうなあ。いや、授業中泣いているかもしれない。そうだきっと泣いている。ああ、なんとむごい。そうそう話は変わるが、実は私は今、会社との契約更改で揉めててねー、全く会社は情実を挟まず、ルールですからの一点張り。そのルールを破るってのは確かに良くない。それは私もわかる。でも、弊社の人事だってルールはルールと突っぱねてるわけでは無いよ。原則を理解した上でこちらの事情もわかるから、落としどころを見つけてるわけだよ。そう言った点では今回のケースだって、私が一方的に悪いのか?ルールはルールとして認めつつ、情状酌量の余地があっても然るべきケースじゃないのか?君もここには表示が無いのを認めてるでは無いか。これはある意味では行政の怠慢だよね。君のせいじゃない。無論、君が職務に忠実なのは立派だし、当然の事だ。それに君の立場もわかってる。でも、単にルールと言うだけでそれを遵守する事のみが正しいってのは、あまりに杓子定規で血が通ってないのでは無いか?」

って感じの話をしていたら、その若い警官は供述書とやらを探す手を止めて、私に向き直り、こう言った。

「本当に知らなかったのですね?」

どうも私がウソを言ってたと思ってた模様。だから確信犯では無いって、本当にわからなかったんだよぅおおお!と絶叫すると

「わかりました。今回は無かった事にしましょう」

それを聞いた私は思わずグラスホッパーのように椅子から飛び上がると

「いや、そうですか?それは有り難い。ではご理解頂いたのであれば、もし今後お困りの事が何かありましたら、力になれることもあるかと思いますので」

と名刺を出すと、一切無かった事にと言う事で、名刺も受け取らないし自分の名前すら明かさない。そうかー、見逃すって事はそういう事なんだなと思い、名刺を引っ込め会釈をし、

「また娘を迎えに8時頃来ますから」

と言うと

「今度は捕まえます」

とニヤリと笑う。お、結構洒落てるじゃねーかと思い交番を後にしたのであった。

と言う事で私のゴールド免許獲得の道はまだ続いている。