東阪通勤  
 

2004-11/21 (Sun)

 
 

実は東京から大阪まで通勤できるのだ。

朝、東京本宅の最寄駅にある4時55分発の始発電車に乗ると、大阪新地の会社の出社時刻、8時50分に間に合うのである。もちろん、こんな事を毎日やってたら体も金ももたない。従い、これをやるのは概ね月1回って感じであるが、それをやった日はいつも昼頃には心も体も終わっているので、あまり感心できる対応方法でもない。

そこで、この間はちょっと半休を取って飛行機の時間を午前10時半にした。これだと昼には大阪の会社に入れるし、体力的にも精神的に負担は軽い。と思ったら、やはり世の中そううまくは行かないのである。

まず、羽田空港への移動は通勤ラッシュ時に当るので、これが重い荷物を抱えている事もあり、また大変。ダイヤだって若干遅れる。そうなると駅スパートで調べた時刻通りには事が運ばず、むしろラッシュも無く、時間の読める始発の方がまだ良いかもしれない。

おまけにこないだは、人身事故で山の手線が乱れ、通常なら品川からの京浜急行羽田空港行きに乗るのであるが、これに間に合わないので、仕方なく便数の多い浜松町からのモノレールに急遽変更したのである。また浜松町であれば駅で飛行機のチェックインができるので、羽田には出発直前に入れば良いと考えたのである。

ところが浜松町に着いて、自動チェックインマシーンでチェックイン手続きしようとしたら「既に出発50分前を過ぎているので機械ではチェックインできません。係員にお尋ね下さい」とのメッセージ。そこで、そのメッセージが出たからには、係員ならば何とかしてくれるのであろうと係員のいるカウンターへ行ったら「既に出発50分前を過ぎているので、ここではチェックインできません。羽田空港でお願いします」との返事。おいおいこれじゃ、何の問題の解決にもならんじゃないか!機械で「係員に」と言ってるのに、係員も結局同じメッセージなら、初めから「係員にお尋ね下さい」って言うなっての!

そこで、慌ててモノレールチケットを買ったが、調べると羽田空港到着は10時12分。要するに出発の18分前である。うううー、間に合わないかも。

ここで若干JALのチェックインシステムの説明をしておかねばならない。

今回はせっせと溜めたマイレージを利用した特典チケットで帰阪しようとしていたのである。これは必ず搭乗15分前までにチェックインせねばならないシステムなのである。チェックイン時間に間に合わないと、次の便にたとえ席が空いていても、このチケットはパーになってしまうのである。そうなるとマイレージはもう元に戻らないし、おまけに新幹線に比べ高い飛行機代を払わなければいけなくなってしまうのである。

そういう事もあって、この時点で私は大変焦っていたのである。羽田到着からチェックインまでわずか3分。果たしてチェックイン出来るのであろうか。無論、モノレールの中ではどの車両にいれば一番早くJALの搭乗手続きの所まで行けるかだとか、即座にチェックイン可能なように、本人確認をするクレジットカードを早くも手に握り締めていたりとかしてたのである。

そして予定通り、モノレールは10時12分に羽田空港駅へ着いた。ドアが開いた瞬間、脱兎の如く飛び出す禿げ親父がいた。モノレール駅は地下2階。JALの出発カウンターは地上2階。その親父は目を血ばらせ重い鞄を持って、エスカレータを一足飛びで、一気に4階分を駈け登ったのである。そして、空いているチェックインマシーン目掛け突進したが、既に心臓バクバクで命懸けのその鬼気迫る姿に、回りの乗客は皆恐怖におののき、バラバラと行く手を開けたのは言うまでも無い。ひょっとしたらテロ対策に配置された警官の中には引き金に手を掛けた奴もいたかもしれない。そして、私は手に握り締めたカードをチェックインマシンに走り込みながら差し込んでのある。

ここで、もう一つ皆様に説明しておかねばならない事がある。私の場合どうも焦ると怪しげな電波を体から発するらしく、ここぞという時にPCをハングさせたり,ファイルを飛ばしたり、電話を壊したりしたことは今まで幾度となくある。従い、今回も当然1回目にカードを差し込んだ機械は「暫くお待ちください」が表示され反応しない。そこでハッと我に返った私はその現象を見て「またか」と思ったが、そこで深呼吸一つ「落ち着け、落ち着け」と念じたら、ほどなく機械が反応し「もう一度最初から」と出た。そこで、こんどは落ち着いてカードを入れると、目出度い事に機械は反応し、チェックインができた。そう間にあったのである。

しかし、これによる体力と精神力の消耗は甚だしい限りであった。チェックイン後そのままトイレに駆け込み、しばし人事不省に陥ったのは言うまでも無い。でも出発時刻まであと僅か、ボヤボヤしていられないので何とか機内に入り席に座ってグッタリしていたのである。こんな事ならまだ朝4時起きの始発便の方がなんぼかマシである。

そして機は飛び立ち、水平飛行に入り機内で飲み物サービスが始まった。実は私はこれが結構楽しみで、その中でも「JAL特性ゆずジュ−ス」は私のお気に入りだ。いろいろあったが、結局この便に乗れたのであるから、ここはこのゆずジュースで気を取り直すのは非常に良い事である。

ところが、その日は気流が悪くサービスを開始して間もなく機長からのアナウンスが有り「あと数分で係員もシートベルトを着用して下さい」との事。その時点で、サービスは私の前の5列目くらいまで来ていた。あと数列、私のところまで果たしてサービスできるであろうか、いやシートベルトサインが点灯してもあとわずかであれば、そのままサービスを続けてくれるのではなかろうかと、期待と不安が交錯する中、私はじっとそのゆずジュースを待ったのである。ああ、今日は何としてもゆずジュースが飲みたい!

そして、正に私の列にサービスが差し掛かり、スチュワーデスが私に微笑みかけたその時、シートベルトのサインが「ポーン」と言う音とともに点灯した。するとである。今、正に私に微笑みかけたスチュワーデスの顔から笑みが消え、突然命令を遵守する職員の厳しい顔に変わったかと思うと、引いていたサービスの台車もろとも、スススススーっと前の方に下がって行ってしまったのである。そう、何だかとてもむごいのである。あああああー、私のゆずジュースううううがああああ!と叫ぼうかと思ったが、それはできない。サービスを受けられなかった私を含め、残りの乗客も仕方が無いとは言え,その不公平さには一言あったに違いない。

サービスは再開される事は無く機は無事に伊丹空港に着陸した。何だか納得できないと思いながら、荷物を棚から下ろしていたら「本日は一部のお客様にお飲み物がサービスできずに申し訳ありませんでした。つきましては出口にお飲み物を用意して御座いますので、皆様よろしかったどうぞ」と来た。そうだろうそうだろう、流石はJALである。ちゃんとこう言った場合のフォローも考えていたのである。

喜んだ私は、なかばスキップを踏みながら出口まで進んで行ったのである。そしたらちゃんと紙コップに飲み物が用意されている。やったー!ようやくあの憧れのゆずジュースが飲める!そして用意されている紙コップを取ろうと思ったら、その中はどれもほとんど同じ色をしていて、どれがゆずジュースかわからんではないか!おそらくは、サービスの内容から考えて、緑茶かリンゴジュースかゆずジュースのはずである。今、まさに機を出ようとしているその時に、他の乗客の邪魔になる事も有りいちいち「どれがゆずですか?」とは聞けない。ここはイチかバチか直感で選ぶしかない。朝方の例のバタバタで私はすきっ腹である。私の場合気持ちが悪くなるので、すきっ腹にお茶は駄目なのである。せめてりんごジュースを選びたいと思いつつ、取った紙コップ。そしてグイと一口。

。。。結局緑茶を引いてしまう私であった。