トイレでの消音  
 

2004-7/28 (Wed)

 
 

女性は何でも小用の場合、その「春のせせらぎ音」を隠すべく同時に水を流すらしいではないか。

確かに心理上、その気持ちはわからないでもないが、その一回の空流しに一升瓶3本分の水が消費されるのをご存知であろうか?これは環境保護の観点から由々しき問題である。

しかし、だからと言ってうら若き花も恥らう乙女にその禁止を促すのも忍びない。そこで、昨今のトイレには「音姫」なる機械が存在するやに聞いた。要するに、水を流す擬音をその機械は発し、「春のせせらぎ」音を消すようで、ウォシュレット同様これもいかにも日本的であると思う。

アメリカやカナダに果たしてそのようなものはあるのであろうか?きっと、日本人とは人間の規格が違う彼女らはそのような音を消す事など全く厭わず、豪快に「春のせせらぎ」ならぬ「ナイアガラの瀑布」の如き轟音を回りに轟かせているのでは無いかと思うが違うか?

しかし、何故「音姫」なのだ?「春のせせらぎ音」を消すのは何も女性特有の行為ではないはず。私などは、一応トイレの壁が薄い飲食店などでは、ひょっとして音が漏れ食事中の方々に不快な思いをさせてはいけないと思い相応の音を出さない配慮をしている。

それは、便器の壷へ落ち込むところの直前の緩やかな斜面に対し、放物線を描くように滑らかに黄金水を落とす方法である。これがコツである。その絶妙なポイントならば音が比較的出ない事を経験上知っており、それを実現させるべく前の壁に手を付いたりして、適宜角度調整を行っていたりするのである。誰も見ていないとは言え、その努力は結構涙ぐましい物がある。

もう今は望むべくも無いが、その昔、時に変に興奮し、愚息が元気な場合などはかなり体を便器に覆いかぶさるようにしないと、その絶妙な着水点に黄金水を届かせるのが至難の業となる場合があった。誤って直接壷に溜まっている水に黄金水を落とすなどしたならば、激しく水しぶきの音がして、その結構激しい音に動転しそのまま足を滑らせ、便器に頭を打つのはもちろん、ズボ
ンを濡らしその処置のためなかなかトイレから出れないなんて事もあった。

従い、音を消す行為は何も女性特有の現象では無いので、「音姫」と言うネーミングは差別では無いかと思うがどうか?

そう言った点では「音殿」があっても良いではないかと思うが、男の場合、むしろ問題なのは排尿時におもむろに放屁される方が多い事であろう。私などはたたずむ野郎の後ろを歩行時に何度ひられた事か。本当に非常識な奴が多い。

そこで考えたのだが、「音姫」が女性を意識した商品であるならば、今度は男性をターゲットにしたその放屁音を消す消音装置の開発は如何かと。名付けて「放屁君」。この男性的でダイレクトなネーミングは爆発的売れ行きにつながる事請け合いかと思う。

え?消音だけを狙うのであれば「音姫」を放屁時に使用すれば良いではないかって?ちっちっち!甘いなー、違うのだよ、黄金水やトイレの水流しはどちらも水流音なのでその周波数はほとんど同じであるが故、互いに良く音が交じり合って、「春のせせらぎ」音は消える、しかし放屁音は消えない。

そう、その甲高い周波数の放屁音は、その水流音を鋭く切り裂き、トイレのドアを貫いて、今、正に食事中の紳士淑女の団欒を一気に崩壊へと導くのである。

ウソだと思ったら、ナイアガラの滝やイグアスの滝の前で、一度ひられると良い。回りの爆音を貫いてその音は高らかに周囲の山々にこだまし、貴方の人間としての尊厳を即、奪う事になるに違いない。

では「放屁君」の発する音は何が良いか?やはりトランペットやサックス等の金管楽器の音がよく馴染むのではないであろうか。ブラスバンドの類の音であれば、どれが金管楽器でどれが放屁音であるかを判断するのは難しいはずである。また、この時「放屁君」が発する音は、曲になっててはいけない。あくまでもアトランダムに音を鳴らすこと肝要で、そこにリズムやメロディがあってはいけない。なぜならば、曲になっていると放屁音は明らかに曲とは違うタイミングや音階で鳴るわけであるから、「あ、あいつは今トイレでひったな?」と言うのがすぐ解ってしまうからである。なかにはリズムに乗り、メロディを付けて放屁できる特殊技術をお持ちの方もおられるであろうが、それは稀有なケースであると思われる。

この辺りの消音についてはまだ研究中であるが、いずれその成果を発表できる時が来ると思うので今暫く待たれたい。無論、その時は環境保護をうたった画期的商品として、経済産業省から助成金を得、特許、実用新案、商標登録し、斜陽を迎えたサラリーマンとしての立場を補うべく、サイドビジネスとして立ち上げて行くので、それまでは温かく見守って頂きたい。