男湯と女湯  
 

2004-7/26 (Mon)

 
 

実は温泉付きマンションなる物を伊東市は宇佐美の方に持っている。子供が小さい頃は家族で良く出掛けたものだが、最近は子供が親と一緒に行動してくれなくなったので、子供を放ったらかして、妻と犬を連れて時折出掛けたりしている。

先週もちょっと行って来た。車で約2時間の行程の後、疲れた体を癒しに早速階下の大風呂へ向かったのは言うまでも無い。そしたら、なんだかいつもと様相が違う。どうやら改装したらしく、入り口が随分と小奇麗な門構えになっている。

ふむふむ、ちゃんと企業努力をしておるなーとか感心して、いつものように右が男湯、左が女湯となっているので、そこで妻と別れたのであった。

脱衣所に入ると先客が一名いるようである。一人でのんびりとは思ったが、そうは贅沢を言ってられない。早速服を脱いでタオルで愚息を隠し、湯煙に煙るドアを開けたのである。するとちょっと中年太り気味の先客が髪を洗っている真っ最中だった。一応、「失礼しま〜す」と断って風呂場に入り、軽く体を流してからまずは湯船に浸かったのである。

改装された湯船はジェットバス付きで、窓から伊豆の海や山が一望でき、その改装振りはなかなか見事な物。夕暮れの景色を満喫しながら、暫しジェットバスの心地良さに酔いしれていたのであった。

先客はまだ一心不乱に体を洗っている。彼が体を洗い終えたら、このあまり広くない湯船。交代に私が出ようなどと考えて、最近始めたウォーキングで疲れた足にジェットバスを当てていたのである。

ほどなくして、先客は体を洗うのを終え湯船に向かって来た。私はその時外を見ていたが、その先客の姿は窓ガラスに黒いシルエットとして写ったので、それがわかったのである。そしたら、先客は途中まで来てちょっと躊躇した後、クルッとUターンして風呂場のドアを開け、脱衣場の方へ上がって行ってしまったのである。

『なんだ、最後に温まって行けば良いのに。私がいたので遠慮したのかなー?』とか思ったが、やはり見知らぬ人と一緒より、一人の方が気が楽なのでこれ幸いとばかり、ジェットバスを今度は尻に当てたりして、「ひゃっほー!」とか嬌声を発したりしていたのである。ちなみに痔ろう気味の方、やはりその治療はジェットバスの直接噴射による血行促進がお勧め。一発で治る。

すると今度は別の男が服を着たまま風呂場に入ってきた。「ん?」とか思った瞬間、彼は言い放った。

「ここは女湯ですよ!」

「???」私の頭の上に点灯する複数のクエッションマーク。すぐに事態が飲み込めず、ウロを覚えていると

「今入っていたのはうちの妻で、驚いて出て来ましたよ!」

えええええ!っとようやく事態が飲み込めた私は

「え!だってここは男湯だったはず。。。」

と言うと、

「標識を良く見て下さい。今までとは逆になってます!」

そう言われたからには、まずは湯から上がり真相を確めねばならない。体を拭くのもほどほどに外の標識を確めると確かに昔と逆になっている。どうやら条件反射でいつものように右は男湯、左は女湯と思ってしまった事がこの事件の発端。改装だけでいいのに、勝手に場所を変えるなよなー!と嘆いても後の祭り。その男は「おまえ、さては出歯亀だな?」と言う疑惑の目を向け、さてどうしてやろうかと思惑している様子。要するに当初中年太りの親父と思った先客は実は豊満な女性であった模様。男の嫉妬も加わって事態はヒジョーにまずい展開となるつつある。

これはやばい!このままだと犯罪者扱いされると思ったその時、てー事は妻は男湯に入っているってわけ?と気付く。

そこで「違います!違います!」と何が違うのがわからんが「妻が男湯に入っていますから」と必死に弁明し、要するに私だけで無く妻も勘違いしているのだから故意では無いと、身の潔白を叫んだのある。

その攻防戦の最中、別の男が横を通り抜けて男湯に入ろうとする。そこで反射的に私は「すみません!今妻が入ってますので、ちょっと待って下さい」とその男を押し留めたその勢いで、男湯に駆けんだ。すると妻は既に着替えている。どうやら、男湯の方はずーっと一人だったらしく、妻に今の緊急事態を告げると、差して驚きもせず「へー、そうなの」と何処吹く風で、ああいい湯だったとのご様子。妻のこのノーテンキさは今更ながら感心させられる。

何はともあれ、故意では無かったと言う事がほぼ証明されたので、一応詫びを入れながらほうほうの呈でその現場を離れ部屋に戻って来たのである。

そしたら、慌てていたのでズボンを履くのを忘れ、トランクスだけで帰って来ていた。

これも充分変質者と間違われるよなー。あびねーあびねー。