老病死セミナー  
 

2003-1/25 (Sat)

 
 

「老病死の前をいかに生きるか」と言うセミナーに行ってきた。

私が大僧正と仰いでいる、昔一緒に仕事をやったことのある人からのお誘いであった。元々この手の類の話は好きなので、二つ返事で行く事にした。

講師は現役の住職であられる曹洞宗竜宝寺住職の中野東禅住職。なかなか弁舌家であり、住職と言うよりコンサルタントと言った方が当たってる感じの方である。その講義の中で、なるほどと思うお話をされていた。

もう70半ばを超えた妻が臨終の際にいた。夫はその枕元にいたのであるが、その妻がいきなり夫に「あなた愛してる?」と聞いて来たのだそうだ。その大正生まれの夫は、今までそのような事を言った事も言われた事も無い。たまげた夫は返答に窮し、小一時間何て応えようかと考えあぐねた結果、こう言ったのである。

「おまえと今まで一緒に生きて来れて楽しかった。本当に感謝してる」

気持ちは無論「愛している」と言う気持ちはあったが、どうしてもそう言えず「愛している」の言葉に代えてこのように応えたのであった。それを聞いた妻は微笑み、安心したようにそのまま息を引き取ったそうである。

中野住職曰く、これは妻に自分が生きてきて意味のある人間であった事をわからせ、その自尊心を取り戻させた事によって、安心して逝かせる事ができたそうである。この死の間際に相手にそれを伝える事はとても大事で、それができないとそれこそ成仏できないらしい。

この話、何かに似ているなあと思ったら、1月10日(2002年)のDiary「理想の結婚」の植村直巳の妻の話を思い出した。そう「植村と暮らせて幸せでした」の言葉である。

やっぱり、一人でもいいから自分を必要とする人がいてくれたら、しっかり生きていけると思うのであります。

蛇足ですがその帰り道、車のラジオから「せいかん体験」と言う言葉が流れて来た。当然「生還体験」が正しいが、瞬間私の頭に浮かんだ漢字は「性感体験」。その事を同乗していたセミナーに一緒に行った「大僧正」に話したら「この老病死のセミナーに出席した直後なのに、その字が真っ先に頭に浮かぶとは流石だ」と感心されてしまった。

いやあ、そんなに褒められると照れるなあ。