感動の再会  
 

2002-12/31 (Tue)

 
 

さて、今年もまた年末である。今日は感動的な再会について書かせて頂きたい。

実は私は不思議な傘を持っている。それは何度も何度も無くしても出てくる傘だ。ご存知の通り、私のアルツは最近酷く、雨が上がった後などはもうほとんど100%と言って良いほど傘を忘れる。従い、傘は高いものを買っても身に付かないので、高いものは使わない事にしている程だ。

この傘もいつ買ったか覚えてはいないが、高いものでは無い。色は黒でワンタッチ式、柄のところと傘の部分に「Cambridge University」のロゴが入っている。

この傘、今まで何回無くしたのであろう。例えば、コンビ二や訪問先の傘立に忘れ、数日して出向くとまだあったりする。そんな事が数度続いたのである。そう言えばこの傘、以前都営三田線のホームと電車の間に挟まれる(6月13日のDairy参照)原因を作った傘でもある。

あれは11月の末であった。その日の予報は雨であったので出掛けには降っていなかったが、傘を持って出掛けたのである。町田から小田急線に乗り、新宿近くになって大分空いてきたので、本を読もうと傘を手すりに掛けようとしたのである。その時、手から離したりすると、また忘れるかもしれないとふと思ったが、まあ大丈夫だろうと言う思いが強く、傘を手すりに掛けたのである。

そして案の定、私はしっかりと傘をそのまま置き忘れたのである。ほんの少しの間なら傘を手すりに掛けた事を覚えているだろうと言う判断はもう全く通用しなくなっている。それ程アルツは深刻化しているようだ。わははは。小田急を新宿で降り、JRのホームまで着いたところで傘を忘れた事に気がついた。今戻ればまだ乗ってきた列車がホームにいるかもしれないと思ったが、朝からの会議の時間が気になり、ああ、あの傘もこれまでかと断念したのである。

そしてそのまま気にはなっていたのだが、忙しさにかまけて放って置いたのである。そして暮れも迫ったある日、新宿駅で下車したところ、ホームに遺失物問合せ窓口があることに気がついた。おお、これはあの傘の事を聞かねばと思い窓口に聞いたところ、連絡先番号を書いた紙をくれたのである。

そして、夕方になってその紙に記載されている電話番号に電話したところ、流石今日のIT社会、ちゃんと落し物情報がデータベース化されているらしく、検索条件を質問してくる。「無くした日は?色は?折りたたみ?ワンタッチ式?柄の形は?...」と言う具合である。

しかし、その結果は該当無し。その時ワンタッチ式かどうかが定かで無かったので、条件を変えてみてもらっても結果は同様。「そうですかー、残念だなー」と言ったところ、先方が柄の形にはJ字型もありますよと言う。質問時に彼は、「柄は真っ直ぐですか?それともL字型?」と言ったので選択肢に二つしか無いのかと思ったのでL字型と答えたが、あれは紛れも無くJ字型。であればJ字型に条件を変更し、再トライするも結果は同様。ここで、ついにあの傘との縁も費えたかと観念したのである。

ところが、諦めて電車に乗って数駅過ぎた時、ふと「ワンタッチ式+J字型」と言う検索条件を行っていない事に気がついた。ワンタッチの条件をはずした後でJ字型の条件にしたので、このパターンが抜けてしまったのである。となるとやはりそこまではちゃんとこの検索条件を確かめて見たくなるのが悲しいSEの性。早速途中下車し、また先程の電話番号へと電話したのである。

担当者はまた掛けてきたこのしつこい男に嫌な対応もせずに、また一から対応してくれたのである。するとその執念が実ったか、該当する傘があったのである。それもデザインに「Cambridge University」の文字があると言う。これはもう間違い無い。はやる気持ちを抑え「じゃ、今すぐ取りに行こうと思うので、今どこにあるのですか?」と聞くと帰ってきた答えは

「小田原です」

「ぅおーだぁーわぁーらぅぁーぁあああああ?????」

一瞬めまいを覚えたが、どうやらあの傘は新宿を折り返し、もう一方の終点小田原でようやく身柄確保されたらしい。しかし、ここまで苦労し探し求めたこの縁のある傘、今更要りませんとは言えません。

そしてこの年末、再び小田原警察署で目出度く、かの傘と巡り会ったのである。尚、この傘奪還に使った費用は東京−小田原間往復+タクシー代で約7000円ほどであった。傘1本が100円ショップで買える昨今、金の問題じゃないとは言え、若干疑問を抱きながら年越しを迎えるようとしているわけである。ま、何にせよ警察で年越しさせずに良かった。

では皆様、良いお年を。