痴漢行為  
 

2002-8/31 (Sat)

 
 

その昔危うく痴漢になりかけたことがあった。

危うく痴漢になりかけたと言うと、その意志があったかのように思われるがそうでは無い。それはまだ私が紅顔の美少年の頃の話である。

中学時代、私の通学ルートは東横線の学芸大学駅から、中目黒で日比谷線に乗り換え、広尾迄の道程であった。ついでに無論まだ童貞でもあった。日比谷線直通の場合は関係ないが、中目黒乗換えの場合、ホームで日比谷線が来るのを待つ事になる。今もそうであろうが、そこは正に通勤通学地獄。日比谷線が到着しドアが開くと脱兎の如く乗客は我先にと乗り込むのである。

ある日中目黒でドアが開き、乗客が車内めがけて殺到した時、いつも肩から掛けていたズックのカバンが人ごみに押されたはずみに肩から外れ、殺到する乗客の間へと消えて行こうとした。

これはいかんと反射的に思った私は、そのカバンの肩掛けのベルトをしっかりと掴むと、そのカバンの後を追う形で地下鉄に乗り込んだ。しかしながらカバンは悲しい事に既に床に落ちた形になっており、乗客の足の間に落ちている。私はと言うと、ここで肩掛けのベルトを放したら元の子も無いと、必死で前かがみになり手を乗客の股の間に置く形でふんばっていた。

しかし、股座に私のカバンを置くその乗客は、何と楽しい事に。。。いや、恐ろしい事に妙齢のOLとおぼしき女性であったのである。そう、私の格好は、嬉しい。。。いや、悲しい事にその女性のスカートの股座に手を突っ込む形になっていたのだ。今思うと女性の股座に手を入れたのはあれが生まれて始めての経験であったのは間違いない。

ほどなくしてその女性が「いやだわ」とか「どうにかならないの?」とか言い始めた。とは言っても、私も必死だ。この殺人ラッシュの中、身動きはできないし、ここでカバンを放したら最後であるからどうすることもできない。

私は何とか理解して頂こうと「ごめんなさい」とか「もう少しで駅に着きますから」とか言ってたような気がする。女性の方ももし私が脂ぎった中年男であったなら、大騒ぎをし、蹴っ飛ばしてでもこの状況を打開しようと試みるはずであるが、まだ中学生。故意に斯様な行為に及ぶわけも無く、多少の小競り合いにはなったが、中目黒、恵比寿、広尾の3つの駅の間、この至福の体制を貫徹したのであった。

今なら冤罪でもあっという間に社会から抹殺されるらしいから、間違いなくカバンの手を放すでしょうな。