CITIBANK  
 

2002-8/18 (Sun)

 
 

日本と米国のお国柄の違いはペナルティに対する考え方の違いにも現れる。

在米時代、CITIBANKと米国M社は支払いデータをコンピュータ同士で連結していた。要は、M社が相手先に支払う小切手データを作成し、それを決まった時間までにCITIBANKのコンピュータに伝送するのである。すると、CITIBANK側は受信したデータを元に小切手を印刷し、相手先に郵送すると言った仕掛けである。

小切手は米国ではCHECKと言い、支払手段のほとんどはこのチェックによる方法である。物品購入時に現金で無ければ、チェックか或いはクレジットカードで支払うのであるが、このクレジットカードの精算も日本のように口座振替では無く、明細書が月に一回送られてくるので、その請求金額のチェックを切り、クレジット会社宛に送付するわけである。

チェックを受領したクレジット会社はそのチェックを銀行に持ち込み、初めて現金がクレジット会社の口座に入金されると言う仕組である。一方、その時点で個人口座からはお金が引き落とされるのである。

とまあ、このようなチェックでの支払いが主流の米国社会、何らかの理由でチェックの発行が遅れたりすると、それなりの制裁を受ける事になるわけである。

このCITIBANKとのチェックデータ伝送を行う際に、CITIBANKとM社はそのシステム利用に関して契約を取り交わした。その契約書に責任者としてサインを求められていたのは、当時の財務担当とシステム担当(私)であった。そして、まだ駐在間もない私は、よくわけがわからず米人の財務担当に促されるまま、サインをしたわけである。

ある日、当方システムがトラブり、チェックデータ送信の遅延が発生し、CITIBANK側で処理を遅らせねばならない事態が発生した。結局は何とかなったが、後日米人の財務担当が血相変えて私のところに飛び込んで来た。

「CITIBANKがシステム処理を遅延させたこの間のトラブルのペナルティとして俺の口座から4000ドル引き落としやがった!これは元々おまえのシステム側トラブルなんで、おまえの方が支払うべきだ!おまえが俺にチェックを切れ!」

おいおいおい、何それ?ペナルティを会社が支払うのでは無く、個人が支払うの?その事実に驚愕した私は契約書を調べると、その時は何故契約書に自分の口座番号を書かせるのかがわからなかったが、そういう事なのである。いやはや、この辺りの米国の個人主義の徹底ぶりと言うか、組織の責任では無く個人の責任を明確にするやり方と言うのは、本当に感心する。

無論、会社に相談してこのペナルティはM社として支払う事になったが、兎に角お国柄の違いを思い知った一件であった。