お盆  
 

2002-7/15 (Mon)

 
 

旧盆の迎え盆も過ぎ、もう明日は送り盆。

昔まだ目黒の実家の隣に父の兄の家族が住んでいた頃は、仏壇の祭ってある父の兄の家にお盆に入ると線香を上げに行ったものである。

仏壇は父の兄の家の大きな座敷に祭ってあった。毎年訪れていたわけであるが、いつもその空間には不思議な趣があった。

お線香は夜に上げにいったが、むせかえるような昼間の暑さがほのかに残り、夏の臭いが風に乗ってゆるやかに漂う、言わばそこは「あの世」と繋がっているかのような、静かで厳かな空間であった。

言い方を変えると、全く無音の世界で「シーン」と言う音が聞こえるかのような感じであった。何故だかわからないが幼心に畏敬の念を抱いたのを覚えている。

風の音とか、小川のせせらぎとか、森のざわめき、男女の囁く声等々。これらの音は仏教では「梵音」と言う。そしてこの静かな音を聞くことを寂聴と言う。そう瀬戸内寂聴の「寂聴」である。「寂」は静かなと言う意。

この「シーン」はまさに寂聴の「寂」であった。

明日は親父がまた茄子の馬に乗って帰っていく。また来年会いましょう。