究極のヘアスタイル  
 

2002-6/20 (Thu)

 
 

実は私が考案する禿を救うヘアスタイルがある。

本当は今日は究極の頭髪回復法である外科手術について書こうと思ったのだが、私が温めていたヘアスタイルに近い方を、偶然今日見かけてしまったので、その興奮冷めやらぬうちに書いておこうと思った次第。

目黒の駅で南北線を降り、改札口に向かっていた時のことである。前方斜め前を歩いてきた男のヘアスタイルを見て愕然とした。あれは私が考案するヘアスタイル!厳密に言うと多少違うが、発想は同じである。

その男は、明らかに前頭部から頭頂部を経て後頭部まで連続した禿が広がっている男であった。所謂典型的な男性型脱毛症。実は髪の毛の生える場所は、部位によって男性ホルモンが影響する場所と女性ホルモンが影響する場所とがある。

横山ノックの頭を思い出してもらいたい。彼の髪の毛は耳の上から後ろ頭にかけてしかない。その部分が実は男性ホルモンが支配している部位なのである。従い、男性は他の部分が禿げてもこの部分だけは禿げないのである。

その男の話に戻るが、彼は明らかに横山ノックと同様の禿げ方であるはずである。しかし、ちゃんと前頭部から頭頂部にかけて髪の毛に覆われている。よく一九分けと言って、禿であっても髪の毛が生える、耳の上の毛を片方だけ長く伸ばし、その伸びた髪をビローンと逆側の耳まで持ってきて、頭頂部を隠す技がある。あなたも何度かこの見苦しい禿を見かけた事があるであろう。風の強い日など吹き流し宜しく、風になびいている姿を見て、鳥肌が立ったご婦人もおられるに違いない。この髪型、俗に「スダレ」とか「バーコード」とか言うのもご存知であろう。

でも、この男の場合、やはり頭頂部の禿を隠してはいるがその一九分けでは無い。観察の結果、何と彼は耳の上では無く、後ろ髪を長く伸ばしそれをビローンと前に持ってきて、頭頂部を隠しているのである。従い、後ろの毛を前に持っていくため、彼のうなじの上には、不自然な分け目が存在しているのである。あんなところに分け目がある人間を始めて見たぞ。

しかし、実は私の考案する禿のためのニューヘアスタイルはこの発想であったのだ。私の考えは、禿であっても髪の毛が生える部位、即ち、耳の上と後頭部の髪の毛に着目し、それを存分に活かした方法である。

まず、耳の上も後頭部も十分に髪の毛を伸ばす。一九分けのように片方だけ伸ばすなどと言う方法では無い。両耳の上、共に伸ばすのだ。例えれば、これ正に平家の落ち武者然とのようになることを現す。

ここからがポイントだが、まず、両耳の上から十分に伸びた髪の毛を上に持ち上げ、頭頂部で結ぶ。結び方は明治時代流行った髪型、「丸髷(まるまげ)」を参考にしてもらいたい。次に、先程の目黒駅で出会った男のように長く伸ばした後ろ髪を、その頭頂部の結び目の下に通すのである。そして通した後、髪の毛が元に戻らないように、もう一度しっかりと結び目をきつく結わくのである。

この結果、どういう髪型になるか?文章ではなかなか表現が難しいが、想像力豊かな読者であれば、このイメージを掴むのはそう難しいことではないはず。

そう、後ろから引っ張って来た髪の毛が前髪らしく額に垂れ、額の禿を隠すのは当然、少年のような可愛さすら醸し出すはずである。頭頂部も両耳の上の髪と結び目、それにその下を通る後ろ髪によって完璧に隠れる。一九分けでは心元無かった、頭頂部を覆う髪の毛の密度も増し、もうスダレとは言わせない。また、そのきつく結ばれた結び目によって髪の毛が強い風で乱される心配からも解放されるのである。確かに分け目は両耳の上、並びにうなじの上に発生する事になり、多少不自然かもしれないが、贅沢を言ってはいけない。あなたは見かけ上禿ではなくなるのだから。

これが私が考案する、禿を救うための究極のヘアスタイルである。禿のあなた、あなたも明日からトライすると良い。きっと禿で失った物以上のもっと大事な何かを失うであろう。健闘を祈る。