治験者  
 

2002-6/12 (Wed)

 
 

そうそう、ミノキシジル(リアップの成分)で思い出した数奇な体験があった。

実は私は日本ではリアップ、アメリカではロゲインとして売り出されている育毛剤の成分、ミノキシジルの治験者、要するにモルモットだったのだ。

あれは確か30の頃、ちょうど髪の毛が怪しくなり始めた時の話である。妻の友人が円形脱毛症となったが、治療の結果回復したとの話を聞き、反射的に「いったいそれはどこの治療機関で、どのような治療をして直ったのだ!?」と妻を問い詰めた。そう、既に迫り来る恐怖に怯えていたのである。

話を聞くと女子医大で直ったとのこと。当然次の週には即、新宿にある女子医大に行ったのは言うまでも無い。そこで、医者に私の現状と行く末に対する不安を述べ、またこの病院が妻の友人の脱毛症を完治させたと言うその腕を見込んでここに来た旨を力説したのであった。

すると医者は、『こんな事でこの男はここに来たのか?』と半ば呆れた感じではあったが、目に涙をため切実に訴える私の熱意に気押されたのか、じゃあそこまで言うのならばと

「彼女に使った薬では無く、まだ日本では試験段階なのだけど、アメリカで使っている薬を使って見る?一応、70%の人に発毛が認められた奴だけど。。。」

先生、70%の発毛率なんて素晴らしい!!使わないでか!とばかり、餌を前にした犬のようにハアハアと喘ぎながら、「この治験の結果、何が起きても訴えません」と書いてある誓約書にあっさりとサインをしたのは言うもでも無い。

そして、与えられたのがミノキシジル。そう確かに大正製薬からの依頼と言っていた。やっぱ、製品化されるのに10年はかかるってのは本当だね。それから、毎朝、毎晩それを頭に注ぎ、毎週土曜日に進捗度合いや薬の副作用が無いか等の検査を女子医大で受けていたのである。

そして実はこの話、ここが醍醐味であるのだが、やはり女子医大。その検査のインターン(医者の卵)はみいんな女性である。従い、毎週土曜の検査では、私の頭を入れ替わり立ち代わり、妙齢の女性がまさぐるのである。数は多い時では5人はいたような気がする。これはこれで何とも言えない至福の時であった。で思うのだが、例えばバイアグラは当時は無かったが、何か勃起治療薬かなんかが治験対象となった場合、女子医大の場合やはり、入れ替わり立ち代わり妙齢の女性があそこをまさぐるのであろうか?

私が毎週土曜に斯様なモルモット行為に励んでいたなんて誰も知るよしもないが、それでまた思い出した話がある。私の友人で子供ができず悩んでいた奴がいる。原因は男の方の精子の絶対数が足りないせいであったため、毎週水曜だったか病院に行き、精子を取得し、その精子を冷凍にし何週分か集め、凝縮し密度が濃くなった精液を奥さんの子宮に注ぐって言う治療行為をやっていた。

その彼、営業マンであったため、水曜になると外周りと称して病院に行き、エロ本一つあてがわれ、暗い病院のトイレでせっせと孤独な作業に勤しんでいたそうである。その精神力と想像力は見事である。とても私では看護婦の手を借りなければできない。それで、その事を彼は自慢げに

「まさか私の上司も、私が毎週水曜こんなとこでマスかいてるとは思うまい」

思わねーよ!ってば。で、何を言いたいかと言うと、私の上司もまさか毎土曜こんなところで、女性インターンに頭をまさぐられてるとは思うまい。それを言いたかったのだ。

それで半年の治験の結果、そこそこの発毛が認められたようであったが、私には良くわからなかった。そして医者から突然「じゃ、これで。ご苦労様」と一方的に治験終了を宣告されたのであった。「へえええ!?じゃ、これから私はどうなるのですか?」と梯子をいきなりはずされた私が哀願すると、何の変哲も無い育毛剤をくれたのであった。それならその辺の医者で手に入るわい!

結構治験ってむごい事がわかった次第であります。でも治験者って交通費とか治験参加費が出るらしいけど、一切無かったな。足元見られたのかな?