鋭い妻達(続き)  
 

2002-5/2 (Thu)

 
 

昨日からの続きである。

その両N美譲に囲まれた夕食会が米国ニュージャージー州のとあるレストランで催されたわけである。当時の私は何人もの部下を抱え、その部下たちの公私共々いろんな相談に乗ってあげる、実に親切と言うか、単なるおせっかいと言うか、要するに世話好きな上司であった。

そして、私には悩める女性の相談には万難を排して対応すると言うポリシーがあった。無論男の相談についても乗らないわけでは無かったが、女性への対応に比べどこか手を抜いていると言われても仕方ないと言うか、そんなの当たり前じゃん。

で、そうして数々の女性の相談に乗り、問題を解決してきたとの自負と言うか、思い込みがあったため、ついつい話に力が入り、自分のした事が如何に素晴らしいかと言う自慢話に変わるのにはそう時間はかからなかった。

「いやー、やっぱ解脱したせいもあって、彼女らの悩みが手に取る様にわかるんですよ〜。わははははははー。何て言うか、やっぱ日頃の精進て言うか、人間できてきましてね〜」なんてことを馬鹿みたいにほざいていたその時、冷静にその燥状態を観察していた旦那Nの妻N美嬢が目をキラリと光らせ言い放った。

「でも、ゲダさん。その中の女性がゲダさんとそういう関係になってもいいですって言ってきたら、それでも純粋に相談だけを聞いてあげられます?」

それまで自分は悟りを開いた聖人君子であるかのように独善的な講釈を垂れていた私は、その男の心の底に潜む本能を知りつくした発言に一瞬たじろいだ。そこですんなり「いえいえ、そうであっても私は指一本触れません」と言えるほど人間ができているわけでは勿論無い。かと言ってここでこの答え方を間違えると今まで築いた信用が失墜するのは目に見えている。どうする!ゲダ。

そう言った考えが頭をよぎり、一瞬答えに躊躇したその時、今度は旦那Tの妻N美嬢がおまえの本心など私はすべてわかっているぞとばかり、意味ありげな笑い浮かべ鋭く突っ込んだ。

「な〜んだ。ゲダさんの解脱ってその程度ですかあ〜」

あああ、完全に心を見透かされている。あまりの二人の素晴らしい呼吸に、一言も返せず、ただゲシュタルト崩壊(うろたえる)を起こしている私を見て、同席していた旦那TとNが慌ててフォローに入った。

「き、き、君達!私の上司に恥をかかせてどーすんだ。ゲダさんが女好きなのは言わなくてもわかってるじゃないか!」

と言ったかどうか忘れたが、兎に角旦那連中は面目丸つぶれの私を前に、かなり焦っていたのを覚えている。

いずれにせよ、恐るべし両N美嬢。私の心にしっかりとトラウマを刻み込んだそのコンビネーション。見事である。

参考までに浮気に対する考え方であるがこの二人は全く考え方が違う。監視の厳しい、旦那Nの妻N美嬢は「気が浮ついたら浮気」。一方、自由奔放な、旦那Tの妻N美嬢は「子供できなきゃOK!」

そんな全く対照的な二人であるから、絶妙なコンビネーションが発揮できるのであろう。T君、N君。厳しい人ほど自分のためになる。そういうことだ。この宝のような奥さん達を大事にしてあげてくれ。お大事に。