ハルゼミ  
 

2002-4/21 (Sun)

 
 

もう既に東京近郊でセミが鳴き始めているのをご存知であろうか?

名はハルゼミ。黒くて小さいセミであるが、平地の松林で4月半ばくらいより6月の入梅の頃まで鳴いている。まだ松の木が燃料として用いられていた昭和20年代頃までは、代々木にもいた記録があるが、松林の減少に伴い徐々に姿を消し、今は関東ではかなり内陸に行かないと見られない。

現在まだかなりの数が棲息しているのは埼玉県東松山市の森林公園である。ここに晴れた日の午前中に行くと松の木の梢で「シュルルルルルルルグエーグエーグエー。。。」と気だるい感じで鳴いている何かがいるが、それがハルゼミである。晴れた日の午前中しか、まず鳴かないので曇りの日や午後ではあまり鳴き声は期待できない。

一匹鳴き始めるとその周辺にいる他のハルゼミが呼応して鳴き始める習性があるので、結構気にはなるはずである。但し、盛夏を思わせるアブラゼミやミンミンゼミのような騒々しさは無く、且つ季節的にも一般の人から見ればセミには早いので、セミと思う人はまず少ない。

このセミの会会員の私は、春になるとこの埼玉県の森林公園に出向きハルゼミの声を聴くのが楽しみの一つである。そこで数年前にあった話である。

私がまだM社にいた頃、だいたいゴールデンウィークが明けた頃に、組合主催のオリエンテーリングと称した催し物が森林公園であった。景品などもなかなか充実しており、まだ幼かった私の子供などはいつもそれを楽しみにしていた。またこの親父である私もその時そこでハルゼミの声を聴く事がまた楽しみであったのである。

その日は快晴で案の上、ハルゼミが鳴きまくっている。その声を堪能してオリエンテーリンを楽しんでいると、前を歩いているカップルの彼女の方が、その鳴き声を不思議に思ったらしく、彼氏に「この声は何かしら?」と聞いたのである。すると彼氏若干首をひねった後「鳥じゃないか?」と仰る。

そのやりとりを聞いた私、やはりここは日本セミの会の会員として正確な情報を伝えねばならぬと言う義務感に燃え、そのカップルに後ろから話し掛けたのである。

「これは実はセミなんですよ」

後ろからいきなり話し掛けられて振り返ったカップルは、捕虫網を手に待ってにこやかに社交辞令的笑みを浮かべる親父に明らかに戸惑った様子。続けて私

「いやねー、世間のみなさんはまさかこの時期にセミがいるなんて思わないから鳥とか、カエルとか仰るけど、これハルゼミって言うセミなんですよ。もし良かったら、今運が良ければ捕まえる事ができますから、やってみましょうか?でも、このセミちょっと高い梢に止まるんで、なかなか捕まらないのですよ。おまけに色も黒いんで松の木の色と同じに見えちゃって見つけるのも大変。でも私は長年ハルゼミ見続けてますから、プロって言うかなんて言うか。。。」

と丁寧に説明していたら、くだんのカップル「あ、いや、結構です」と言ってそそくさと歩いて行ってしまった。。。

ま、普通は余計なお世話だわな。