懺悔  
 

2002-4/17 (Wed)

 
 

人生の中で一番懺悔したい事と言えば、あの幼き日のイタズラ電話である。

確かあれは小学校高学年、近くにいる友人の家に遊びに行った時のことであった。いつも決まりきった遊びに飽き飽きしていた私は、その友人の2,3歳年上のお姉さんの誘惑に乗ってしまったのである。

「イタズラ電話しましょうよ」

「イタズラ電話」何かわからないが、幼い心に響いたそのどこか隠微な語感に異様に興奮した私は、すぐさまそれに同調したのであった。

そのお姉さまが私に授けた方法は、まず電話帳でアトランダムに名前を探し、そこに電話をかける。そして奥様とおぼしき人が出たら、まだ紅顔の美少年で声変わりもしていない、天使のような声を持つ私が、キャバレー(なんでかその言葉は当時から知っていた)の女性と称し

「あけみと申します。実はお宅のご主人、しつこいんですよ。どうにかなりませんか」

と電話をするのである。すべての電話の向こう側の奥様連中が信じたわけではなかったと記憶しているが、その中の一人がマジに反応し、

「んまあ!毎日ですの?」

そこで私

「そうなんですよ、もう来ないように言っていただけません?」

すると奥様、若干怒気を孕んだ声で

「よ〜くわかりました。言っておきます」

と言って電話をガチャンと切られたのであった。

そして電話を置き、まんまと引っ掛かった相手を笑い、その禁じられた遊びに昂じたものであった。

その当時は何とも思わなかったが、今この歳になって思うがとんでも無い事をしたわけである。ひょっとしたら、それがきっかけで離婚してたり、子供がグレたり、会社を首になってたり、頭が禿げたりしてたかもしれない。要するに一つの家庭を崩壊に追い込んだかもしれないのである。もし、私がそのような言われ無き誤解を受けたらどうするのか?普段からあまり信頼の無い私は想像するにゾっとしてしまう。

だいたい旦那が「濡れ衣だ!」と泣いても叫んでも、この手の類の話に関しては、世の奥様連中は旦那の言う事を一切信じようとはしないのである。ねえ、小川さん。そうでしょう?

あの時のことを謝ろうにももうどこの誰かもわからない。この償いをどうしたらよいのであろうか?

そういえば、私は何もしてないことを追求されると実に弱い。しどろもどろになり、何処から見ても挙動不審、一見して全くのクロにしか見えない態度となってしまう悲しい性の持ち主である。

「ああああ、相手が誤解している。私は潔白だ。何とかしなければ」と言う焦りが反って墓穴を掘る事になる。

一方、初めからごまかす場合の態度は実に堂々としている。頭の中であらゆる追求に対する想定問答集を想定して、どんな場合にも対処できるようシミュレーションをしているからである。従い、何かした時にバレる確率は低いはずである。。。と思ってるのは私だけかもしれないが。

ま、今後真面目に生きよう。それをあの電話の向こうの方々に対する償いとさせて頂こう。

ごめんなさい!もうしません!許してください!