T常務  
 

2002-2/26 (Tue)

 
 

今日はM社のT常務の一周忌である。

T常務はM社の米国法人のCEOであったが、一昨年突然の病に倒れられ、昨年の今日帰らぬ人となったのである。

実はこのT常務にはとてもお世話になった。2000年の夏、5年駐在の任期満了を一年後に控え、まだ米国滞在に未練がある私は、ちょうどその時M社の小会社が米国に設立される話を聞き、であればそこに身を投じてみたいと思っていたのである。

そんな中、夏休みを利用しグランドキャニオンへと家族旅行へ出掛けたのである。

ラスベガスから激しく揺れるプロペラ機のお蔭で、みんなひどい乗り物酔いになって何とかグランドキャニオン空港へと降りたった。そこからバスに乗り継いでいよいよグランドキャニオンへと向かうわけである。

バスに乗って座席に座ろうとすると、なんだか聞き覚えのあるダミ声が聞こえてきた。ふと横を見るとなんとそこには、我が米国会社のCEO、T常務ではないか。驚いて思わず、
「Tさん!」
と声を掛けると、T常務も有り難い事にこの下っ端の事を覚えておいでで
「おお、Y君じゃないか!」
と驚いたご様子。聞くと何でも、米国に駐在してから始めての夫婦旅行とのことであったが、この奇遇。道中、楽しくお話をさせて頂いたのである。

その時、この偶然に感謝しつつ当然のことながら私の米国滞在延長とその小会社へ行く想いを伝えさせて頂いたのである。

そしてグランドキャニオンに着くと、何とホテルも同じ。そればかりか、そのバンガロー式のホテルの同じ屋根の下の隣同士。う〜む、ここまで来ると誰かの陰謀では無いか。そう言えば私がグランドキャニオンへ行くのを社長秘書のIは知っていた。であれば、彼が私をT常務の介添え役にしようと仕組んだのでは無いかと勘ぐるしかなかったのである。

しかしながら、奥様もとても気さくな方でほんの一日であったが、家族共々とても楽しい時間を過ごさせて頂いたのである。

実はこの時の私の米国に滞在したいと言う勝手な想いをご理解して頂き、その後いろいろとお世話をして頂いたことを後で聞き、正に恐縮且つ感謝している次第であります。

そしてこの半年後に旅立ってしまわれたわけであるが、あの時のお姿からは全く想像できない出来事であり、誠に残念である。

そして、その後私も会社を変わり、中途採用者の研修に出た時、ちょうど私と同じ部に配属された年配の方と食事をしたら、
「あなたは元、M社ですよね?亡くなられたT常務をご存知ですか」
と聞かれた。
「はい、とてもお世話になりました。で、ご関係は?」
と聞くと、これがまた何と驚いたことにT常務の妹さんのお婿さんのお兄さんに当たる方!

いやはや、これまた驚かされた話。そこで早速T未亡人にご連絡を差し上げたわけである。無論、奥様もこの話を聞かれて驚かれていたが、私の方はT常務のお墓の場所を聞きまたまたびっくり。そこは何と私の祖父母の眠る鎌倉霊園!

今、私の家にはグランドキャニオンを前にした家族のスナップ写真が飾ってあるが、これはT常務が直々にシャッターを押されたものであり、今や家宝として珍重されている。

T常務。ほんの短い間でしたけど、本当にいろいろとお世話になりました。今度お墓参りに行かせて頂きます。どうか安らかにお眠り下さい。