O氏との初対面  
 

2002-2/2 (Sat)

 
 

今日もO氏のお話で攻めよう。

O氏は気持ちの優しい思いやりのある人だ。今はもう年を経て通常人となっているが、若い頃はいつも不機嫌そうでとても怖い存在であった。でも今思うとあの不機嫌さは、多分に人見知りであったのと、またテレ隠しもあったような気がする。しかし出会った当時は、いやはや大変取っ付き難い人だと思ったし、加えて頭も切れ所謂カミソリのような言動が多かったのも、怖さを倍加させていたように思う。そのO氏との初対面。これがまた印象的だったのである。

私がM社に入社した時、歓迎会を鉄板焼き屋で開いてもらった。歓迎される身であってもなんせまだ新人。その店で鉄板焼きを焼くのは当然私の役目であった。そして私がその材料を熱くなった鉄板に乗せようとした時、鋭く空気を切り裂く一言が飛んだ。

「野菜が先じゃい!」

親睦を深める歓迎会に全くそぐわない、若干怒気を孕んだその凶器のような一言に一瞬凍りついた私は、その言葉の出先に目を向けた。するとそこには、サラリーマンと言うよりは、そのままゲバ棒とヘルメットを持たせた方がピッタシと言った感じの、メガネをかけ神経質そうな痩せた男が、口をへの字に曲げて憮然と座っていた。そしてその態度は、野菜より肉を先に鉄板に乗せたと言う,非常識な私の行為に対して、不満の意を露わにしていた。

何も社会人になったばかりで右も左もわからない新人に、鉄板焼きの手順なんかで真剣に怒らないでよ〜。これが当時の私の正直な感想である。この時のO氏との衝撃的な初対面によって、以来私の胸にO氏は触れるのをはばかれる「狂気の人」として、暫くの間刻み込まれることになったのである

新人の私はその勢いに気おされ、どうして良いかわからずうろたえていたところ、その上司であるヘルメットのような髪の毛を頭に乗せた身長が2メートルはあるかと言う大男が、このO氏の扱いには慣れているとばかり人なつこい笑みを浮かべ、O氏の調教師よろしく

「まあまあまあO君。今日は目出度い席なんだから」

と言ってフォローして、この暴れ馬を即、なだめてくれたのである。これが昨日の飲み会でもご一緒させて頂いた、M社でも指降りの豪放磊落な「ヤッタカマン」ことN氏である。何故ヤッタカマンと言うと、結構せっかちな方で、頼んで間もなくすると「ヤッタカ?ヤッタカ?」と聞きに来るからである。

明日はこのN氏の話をしよう。