出張  
 

2001-11/30 (Fri)

 
 

一日空けてしまった。実は大阪出張だったのだ。

さて、新大阪駅。新幹線を降りてホームを歩いていると、何か物足りない。良く考えるとコートを着ていない。げげ!コートを棚に忘れたと気づき、既にベルが鳴っている列車に飛び乗るかどうかを一瞬迷ったが、意を決し脱兎の如く乗っていた車両まで駈け戻り、荷物を乗車口の前に置いて、駅員に「荷物を忘れた!!」と絶叫し、車両に乗り込んだ。自動ドアを開けるとあるある確かに棚に私のコートが。

突然血相変えて息せき切って現れた不穏な男に驚く客を尻目に、私は俊敏に車両中ほどまで駈けて行き、コートをむんずとわしずかみにすると、バネ仕掛けの人形のように反転して、再び出口に向かって飛んでいったのであった。

そしてベルが止む直前に無事ホームへと舞い戻り、思わず出た「セーフ」のポーズ。それに応える駅員の「グッド!」を表す親指を立てた握りこぶし。おお!洒落てるじゃねーか、大阪は。

と言う波乱の幕開けで迎えた今回の大阪出張。やはりこれはほんのプロローグであった。

外人さんとの待ち合わせ場所は大阪帝国ホテル。ホームページで場所を調べたので道に迷うことは無い。御堂筋線を「なんば」で降りてそのホテルへ向かう途中、垣間見えた、大阪名物のカニ道楽や食いだおれのピエロ人形。おお、やっぱ夜外人を連れて来るのはここだな。ホテルが大阪名物の近くなのはラッキーとか思いながら、歩いていくとなんだかだんだん風俗営業の店が多くなってきて、妖しい雰囲気。

「?」と若干の不安を覚えつつ、ようやく見つけた大阪帝国ホテルの看板。「なんだ、名ばかりで実際は単なるビジネスホテルか。あの会社儲かってるはずなのに、こんなところへ泊まらせるなんて結構シブイのかも」とか思いながら、フロントでチェックインする。

こんなところに本当に泊まってるのかと疑問に思ったので、フロントに「ポールさんって泊まってます?」と聞くと、「さあ」てな返事。そこで待ち合わせは2階のロビーなので「ロビーは2階ですよね」と聞くと、「ここがロビーです。」と言う。

再び点灯する「?」

「と言うことはここがロビーですか?」
「さようでございます」

そしてフロントはまだ3時前のチェックイン時刻前なので、ちょっと部屋の状況を見て来ると言って消えてしまった。

仕方なく1階ロビー、と言うより単なるオープンスペースで椅子に座り、若干不安を覚えながら座っていると、今度はフロントに支配人らしき人が現れた。そこでもう一度同じ質問を。

「2階にロビーは無いのですよね」
「ここはビジネスホテルですので、そのようなものはありません」
「でも、お客は2階のロビーと言ったのですけど。。。」

そこで、ハッとしたような支配人?の様子。

「お客さん。実はもう一つ似た名前の帝国ホテル大阪があります。そこでは無いのですか?」

それを聞いてうろたえる私。

「へ!?どこが違うのですか、だってここはそれでしょ?」
「ここは大阪帝国ホテルです。帝国ホテル大阪ではありません」

おいおいおい、そんなんあり?クイズやってんじゃねーぞ。

「じゃ、それ何処です?場所は?電話番号は?」

って聞くと差し出した電話番号は、その外人から聞いていた番号。そっかー!電話番号聞いた時、違ってたけれどこれは部屋へのダイレクトかとか思ってあまり気にしなかったら、別にあるのかー!時間を見ると既に約束の3時の5分前!

「こっからどのくらいですか?」
「20分は最低かかります」

それを聞いて、日本が初めての外人客を戸惑わせてはいかんと思った私は、ス−ツケースをフロントに押し付けると

「これ預かっといて!」

と言い残し、外へと飛び出したのであった。

信号の向こう側に止まっているタクシーに乗ろうと信号無視をする勢いだったが、ここではねられたら元も子も無いと、はやる気持ちをぐっと押さえ信号が青に変わるのをじっと待ち、ようやくタクシーに乗り込んだ。そして早速、車中から電話を掛けてなんとか先方を捕まえ遅れるとのお詫びを入れた。

そして着いたのは先ほどの「大阪帝国ホテル」とは似ても似つかない超高級ホテル「帝国ホテル大阪」。

そうだよなー。しかしここに泊まったら会社はOKって言わなかったろうから、結果先程の「大阪帝国ホテル」チェックインは正解だとか思ったが、駆けつけた時はもう汗びっしょりの約30分遅れ。それでもタクシーの運ちゃん曰く、前日の環状線工事に伴う渋滞に比べればあなたはラッキーだとのことであった。

しかし、ロビーには着いたが今度は誰がその人かわからない。典型的な白人や黒人ならわかるが、さきほど電話を掛けた時につないでくれたベルボーイに聞くと、どうやら中国人か韓国人の様子。そこでそれらしき人に「MR.CHUNG?」と声かけると、当然いきなり英語で声掛けられた日本人は、皆怪訝な顔。

わかんねーよ、外見じゃ!!

数人に声掛けたがいずれもはずれ、その全員が全員、英語で聞かれたからには何となく日本語で「違います」と応えるのはどこかはばかれる様子。そうかー、相手から見れば俺が外人かもしれないしなー。とりあえず英語喋ってるし。そこで、いくらなんでもこの不自然な英語攻撃を続けるわけにも行かないので、暫し待つことにした。

また人が少し入れ替わったので、再びベルボーイを捕まえ

「いったいどの人?」

って聞くと、キョロキョロしていたボーイであったが、奥から現れた男を見つけると

「あの方です」と指を指したのは大橋巨泉のようなポールちゃん。

そのポールちゃん、私がお詫びをするとにこやかに笑い

「NO PROBLEM」と言って手を差し出したのであった。

そっから約8時間。仕事の話は元より、2次会までじっくりと日本文化を堪能させることができて良かった良かった。でもせっかく見つけた「食いだおれ」「カニ道楽」へは行かなかった。

しっかし疲れたびー。