赤貧ゴルファー  
 

2001-11/5 (Mon)

 
 

その昔、プロゴルファーの青木があの名高い全英オープンで7位に入った。そのトーナメント中一時は2位になったりして、まだ海外で日本人選手が活躍する事の無かった時代、日本国中が興奮したのをよく覚えている。

そしてその出来事に感動してプロゴルファーを目指した私の知り合いがいる。

プロゴルファーを目指したはいいが、どちらかと言うと背丈も低くおまけにゴルフの経験が全く無いとあっては、結果は自ずと知れたところ。やはりいつまでたっても芽が出ず、くすぶっていたのである。無論生活の方も苦しく、食うものも食わずゴルフの練習に励んでいたのである。

そんな彼が、ゴルフコースに出た時のことである。とあるホールでホールインワンを達成してしまったのである。

祝福する一緒に回ってるキャディー。しかし彼は顔色を失いうろたえるばかり。それもそのはず、ゴルファーなら誰でも知ってると思うが、ホールインワンを達成した場合、ホールインワンした者が関係者に記念品を配らねばならないと言う忌まわしき風習がある。達成した人がお祝いを頂くのでは無いのである。これに対応するためのゴルファー保険もあり、ホールインワンを達成すると50万も保険で支払われたりするのである。

そんなわけだから、赤貧の彼が喜べるわけも無い。無論、保険にも入ってるはずも無い。思わぬ散財をせねばならないピンチを目の前にし、しばし途方にくれていた彼は気を取り直すと、向き直ってキャディーに聞いた。

「あのー、この場合ゴルフ場にも何かするんですか?」
尋ねられたキャディー、にこやかに
「ええ、このホールに記念樹を植えて頂きます」
すると彼
「只じゃないですよねぇ?」
キャディー応えて
「ええ、まあ5000円からありますが、御目出度いお話ですから、皆様2万とか3万とかお出しになりますが。。。」

そうですかと呟いた彼、おもむろにポケットに手を入れると皺くちゃになった五千円札を取り出すと、キャディーの手を取りその五千円札を握らせた。

驚いたキャディー

「あれま、違いますよ。私に払ってもらっても困ります。これは事務所の方にお願いしま。。。」
と言いかけたキャディーを遮って、彼は言った。

「黙ってて下さい。これ、口止め料です」

かくして彼の栄光は、よくあるパー3のバーディとなり、永遠にスコアから消えたのであった。