北京ダック  
 

2001-9/9 (Sun)

 
 

今、千と千尋の神隠しと言う巨匠宮崎駿雄の作品が巷では人気だ。そこに出てくる八百万の神々を迎える湯治場の油屋は、どこかなつかしい感じのする建物だ。う〜む。前世での記憶かと思ってたら、その参考になったのが目黒雅叙園とのこと。確かにそういわれればそうだ。

その目黒雅叙園で思い出した話しであるが、もう10年以上前になるが今は亡き親父の喜寿の会を目黒雅叙園の中華料理店で行った。宴が始まり、メインディッシュとなる北京ダックが運ばれてきた。給仕が蓋をあけると見事な北京ダック。そしておもむろにその給仕はナイフを持ち、見事な手さばきで北京ダックをさばき始めた。

そうしたら、当時おそらく小学校であったと思われる兄貴の子供のE美が、とことことその給仕のところに行き、話し掛けた。

「この北京ダック、おじちゃんが殺したの?」

あまりに衝撃的で胸元をえぐる直球のような質問に一瞬たじろいだその給仕は、半ば狼狽を隠せない様子で

「い、い、い、いや、これは私が絞めたわけでなくて。。。」

と仕事の手を緩めず答えたら、また続けて

「じゃ、誰が殺したの」

その質問には答えず、給仕は黙々と北京ダックをさばき続けたのであった。

ニューヨークのチャイナタウンにも安くておいしい、その名も「北京ダックハウス」がある。ここの北京ダックをさばくコックの親父はまさしくプロで、客の眼前で鮮やかにさばくのだが、眉毛ひとつ動かさない。やっぱ、この親父にいつかあのE美の質問を見舞ってやりたいものである。

動じず「俺が殺した」と言いそうではあるが。